◆トレーラー◆ 空がゆっくりと暗くなっていく。 恐ろしい夜がやってくる。 神に祈りを捧げよう。夜が明けるように。朝日がこの丘に登るように。 魔道書大戦マギカロギア『日の照る丘に夜が来る』 -神に贄を捧げなければ ◆レギュレーション◆ 人数:3~4人 リミット:12シーン ルルブ:基本ルルブ キャラクター:3~4階梯 継続可 ◆背景◆ シナリオの舞台であるエンバスの町には「漆黒の支配者」と呼ばれる強大な力を持つ越境者が封印されていました。 旧世界秩序に所属する書籍卿「歌うヤドリギ」は、この越境者を甦らせようと企んでいます。 そのために禁書〈降り注ぐ深淵の夢〉を解き放ち、「漆黒の支配者」の復活の儀式を再現しようとしています。 元々見えない力に強く呼びかける不思議な力を備えていた青年、ユーゴを生け贄に選び、町に伝わる伝承をなぞることにしたのです。 PCたちは〈禁書〉を回収する傍ら、「漆黒の支配者」が復活しないよう儀式を阻止する必要があります。 ◆舞台◆ シナリオの舞台は、イタリアにほど近いフランス南部にある小町エンバスです。 オリーブの栽培を主要産業としている人口600人ほどの小さな町で、町の郊外には頂上に古代の遺跡を抱いた丘が広がっています。 この丘にある遺跡は越境者「漆黒の支配者」を祭っていた祭壇です。 シーン表は「エンバスシーン表」を使用してください。 また、シーン表で遺跡の丘が出た場合、封土「遺跡のある丘」とそれに憑依した断章〈深淵〉が自動的にシーンに登場していることに注意してください。 判定に失敗した場合、凶兆を発動することができます。 ◆導入フェイズ◆ 以下の3つのシーンが発生します。 ●〈大法典〉からの依頼 〈大法典〉に集められたPCが禁書回収の依頼を受けるシーンです。 所属している支部に呼び出されたPCたちは、支部の責任者代理である影原文子(208p)から以下のような話を聞きます。 フランスとイタリアの国境沿いにある小さな町「エンバス」で、書籍卿「歌うヤドリギ」が活動している。 魔法災厄を起こそうとしている可能性が高い。 先回りして町にあるという禁書〈降り注ぐ深淵の夢〉を回収してほしい。 また、〈禁書〉がどんな魔法災厄を起こすかは今のところ判明していない。 PCたちが禁書回収に同意するとこのシーンは終了します。このシーンが終了すると舞台は「エンバスの町」へ移ります。 猟鬼以外で一番位階の高いPCはシナリオアンカーとして書籍卿「歌うヤドリギ」に【運命】を1点獲得してください。推奨属性は宿敵です。 ●丘の青年 PCたちがエンバスの町へやってくるシーンです。戸口か表の顔があるPCが登場してください。そのほかのPCの登場は任意です。 商店の前でユーゴが途方にくれています。 ユーゴは町の外れにある「遺跡のある丘」に一人で住んでいる青年です。内気で人見知りですが、今までは町の人々と仲良くやってきていました。 しかし、最近町の人たちが急に冷たくなり、ユーゴは困惑しています。ユーゴ自身にはなぜ冷たくされるようになったのか心当たりはありません。 エンバスの町に買い物に来ているユーゴが町の人に無視されている様子などを描写してください。 またこのとき、町の人に話しかけた場合「あいつ(ユーゴ)には関わらない方が良い」「あいつが近くに来ると妙なことが起きるから」と答えてください。 町の人々はPCたちには友好的な様子です。 ユーゴの周りでは起きた妙なことには「緑色の小人が店からパンを取っていった」「羽の生えた馬が町の中を駆け抜けていった」「ワインを酢に変えられた」などと答えてください。 シーンの該当PCはシナリオアンカーとしてユーゴに1点【運命】を獲得してください。属性の推奨はありません。 「ユーゴ」のハンドアウトを公開し、シーンを終了します。 ●町の子供たち これまでにシナリオアンカーを獲得していないPCが登場します。そのほかのPCの登場は任意です。 町を歩いているPCたちは、2人の少年少女が口げんかをしている場面に出会います。 少年が「危ないから、あいつにあまり関わるな」と怒り、少女はそれに「ユーゴは友達なの。ひどいことを言わないで」と反駁しています。 口論の原因は、ユーゴに会いに「遺跡のある丘」行くという少女・ミナを少年・リュカが止めようとしていることです。 最終的にリュカが大声を出して、それに怯えたミナが半泣きになりながらかけ去ってしまいます。 リュカはそれに落ち込んだ様子です。 もしこのシーンで、二人にユーゴについて尋ねた場合、以下のように答えてください。 ミナ:ユーゴは友達だ。何も悪いことをしていないのに、ユーゴをいじめる町の大人はひどい。 リュカ:ユーゴのことはよく知らないけれど、今は近づかない方がいい気がする。 シーンに登場したPCは「ミナ」か「リュカ」をシナリオアンカーとして【運命】を1点獲得してください。属性の推奨はありません。 「ミナ」「リュカ」のハンドアウトを公開し、シーンを終了します。 ◆メインフェイズ◆ 以下のマスターシーンが発生します。 ●変質 1サイクル終了時にユーゴの断章が未回収の場合、発生します。 ミナが「遺跡のある丘」にあるユーゴの家に遊びに行くシーンです。PCは登場できません。 いつもは喜んでミナのことを迎えてくれるユーゴが、ミナを家に上げてくれません。 どんなにミナが頼んでもユーゴは「だめだ」「もう会えない」「お願いだから帰って」と繰り返すだけです。 しばらく粘ったミナもやがて諦めて帰っていきます。そんなミナをユーゴは家の中から見送っています。 ユーゴの姿は狼のようにぴんと立った耳に鋭い爪と毛が生えた手。まるで獣のように変化しています。 ユーゴが憑依させられている断章の力で獣に変化しつつあるのです。 ●生け贄 2サイクル終了時(3人の場合は3サイクル終了時)に発生します。 ただしマスターシーン「変質」が発生していない、またはサビーネの眷属化が解除されている場合、このシーンは発生しません。 生贄の儀式が実行されるシーンです。 眷属と化したサビーネに先導された町の人々がユーゴを「遺跡のある丘」へ連れて行き、丘の上にある祭壇で彼を殺そうとします。 GMは「闇」の領域からランダムな特技を選んでください。PC全員はその特技で判定に挑戦することが出来ます。 一人でも判定に成功すれば、生け贄にされるユーゴを助け出すことが出来ます。 全員失敗した場合、介入することは出来ません。 ユーゴは殺され、断章〈深淵〉の憑依深度が1上昇します。(憑依深度4になる) もし、「歌うヤドリギ」がユーゴに対して籠絡を使用していた場合、判定に挑戦することはできません。 ●「偽りの味方」 このシーンは予知夢シーンです。ガストンの【秘密】が公開されたときに挿入されます。 書籍卿「歌うヤドリギ」がユーゴに対し籠絡を使用するシーンです。 描写は以下の通りです。 オリーブ畑を抜けて、ユーゴの家へガストンが歩いていく。 「僕は君の味方でいてあげる。町の人がみんな君を嫌っても、僕だけは君の味方だ」 「だから、あんないきなり現れた連中(分科会)の言うことなんて聞いちゃ駄目だよ?」 「歌うヤドリギ」とユーゴに運命を獲得しているPCは予知夢判定に挑戦することが出来ます。 予知夢判定に成功すると「歌うヤドリギ」との戦闘になります。 ●ミナの【秘密】が公開されたとき ミナから自身の夢について、町に伝わる昔話に似ている、夢が本当になってしまったらどうしよう、と告げられます。 ハンドアウト「町の伝承」を公開 ●リュカの【秘密】が公開されたとき ガストンやサビーネなど、町の大人たちが集まってひそひそと噂話をしている描写を行ってください。 ハンドアウト「ガストン」「サビーネ」を公開。 ●町の伝承の【秘密】が公開されたとき ハンドアウト「遺跡のある丘」を公開 ●断章〈降り注ぐ〉が回収されたとき ユーゴの【秘密】が更新されます。 この時点で「歌うヤドリギ」に戦闘で勝利している場合、断章〈降り注ぐ〉を回収したPCがプライズ「ユーゴ」の所持者となります。 「歌うヤドリギ」に勝利していない場合、プライズ「ユーゴ」は「歌うヤドリギ」が所有しています。 ◆クライマックス◆ 以下の条件を満たした場合、「深淵の支配者」が復活します。 1.ユーゴが獣にされた(マスターシーン「変質」が発生した) 2.ユーゴが生贄にされている(マスターシーン「生贄」が発生した) 「深淵の支配者」が復活した場合、クライマックス戦闘の相手が〈禁書〉から「深淵の支配者」に変更になります 。(断章が「深淵の支配者」に取り込まれる演出を行ってください) また、〈大法典〉から以下の内容の連絡が来ます。 「深淵の支配者」の復活を〈大法典〉でも観測した。 君たち分科会ではそれを相手取るには力不足である。 甚大な被害が出てしまうが、一旦その場を離れ態勢を立て直すべし。 クライマックス戦の相手が「深淵の支配者」になっている場合、クライマックス戦闘を破棄することが出来きます。 ただし、破棄した場合は即座に「歌うヤドリギ」以外のNPCが疵となるため、そのことを説明してから選択させてください。 ◆エンディング◆ シナリオの進行によって描写を変えてください。代表的な結末の指針は以下の通りです。 ○〈禁書〉の編纂に成功した場合 町は本来のの姿を取り戻します。 薄暗くなっていた空もすっかり元の眩しさを取り戻しており、変化してしまったユーゴも、〈禁書〉の影響がなくなったことで元どおりに戻っています。 ◯〈禁書〉の編纂に失敗した場合 無理やり〈禁書〉を封じた代償として、丘の遺跡が破壊されます。 また、〈禁書〉の力を封じることに失敗したため、ユーゴの変化は元に戻りません。 ◯「深淵の支配者」との戦闘に勝利した場合 「遺跡のある丘」を飲み込んで「深淵の支配者」が消滅します。 「遺跡のある丘」は破壊され、エンバスの町も町の機能に甚大な被害を受けますが、ミナやリュカなど街の住人は何とか生き延びていることでしょう。 ○「深淵の支配者」との戦闘に敗北、または戦闘を行わず逃走した場合 エンバスの町は「深淵の支配者」に飲み込まれ、〈大法典〉の魔法で物質界から隔離されます。 「歌うヤドリギ」以外のNPCがすべて疵となります。 ユーゴが生きており「歌うヤドリギ」が彼を所有している場合、エンディングで「歌うヤドリギ」がユーゴを連れ去ろうとします。 ◆ハンドアウト◆ □ユーゴ 「遺跡のある丘」に一人で住む内気な青年。 学校になじめないミナの話をいつも聞いてくれる。 最近石を投げられたり、物を売って貰えないことが多発しており、なんとなく身の危険を感じている。 ■【秘密】 彼は一種の特異点らしい。彼の中に何らかの力が渦巻いているのを貴方は感じた。 しかし、その力は何かに抑えつけられているらしく、全貌を知ることが出来ない。 ◆断章回収後 このNPCはプライズとして扱う。 彼は異界へ強く呼びかける力を持っているらしい。 彼を所持する人物は、召喚タイプの魔法の判定に+1の修正を受ける。 □ミナ エンバスの町に住む少女。 学校になじめずいつも丘に住むユーゴの元へ遊びに来ている。 クラスメイトのリュカが苦手。 最近、大事な友達であるユーゴが町の人に殺される夢をよく見ており、怯えている。 ■【秘密】 断章〈夢〉に憑依されている。 彼女が見ている夢は、断章が見せた一種の予知夢である。 もし阻止できなければ、この夢は2サイクル終了時に現実となるだろう。 ◆町の伝承のハンドアウトを公開 □リュカ ミナのクラスメート。 運動が得意な大柄な少年。 物言いが乱暴なためミナには怖がられている。 いつも一人でいるミナを気にしているが、それをうまく伝えられない。 ■【秘密】 町の大人たちが最近、急にユーゴに対して悪口を言うようになったことを不信に思っている。 またそのユーゴと仲の良いミナのことを心配している。 ◆ガストン、サビーネのハンドアウトを公開 □サビーネ ミナやリュカの担任を務める女教師。生真面目な若い女性。 教会や町の集会に熱心に参加しており、ユーゴにも良く声をかけている。 ■【秘密】 彼女は"巫女"である。 元々彼女は町の人々と交流を持とうとしないユーゴのことを快く思っていなかった。 断章はそんな彼女の想いを増幅させ、町の人々にユーゴを迫害させようとしている。 1サイクル終了時までに断章〈深淵〉が回収されなければ、彼女は《悪意》の魔剣として眷属化されるだろう。 □ガストン 学校の管理を一手に担う用務員。 気さくな人柄で子供たちに好かれている。 ユーゴとも仲が良く、孤立しているユーゴの数少ない理解者である。 ■【秘密】 彼が書籍卿「歌うヤドリギ」である。 彼は丘に昔から伝わる儀式を再現しようとしており、ユーゴを生贄に選んだ。 ユーゴは彼の手により断章〈降り注ぐ〉を憑依されている。ユーゴの体の変化はこの断章によって引き起こされた物である。 「歌うヤドリギ」はユーゴをプライズとして獲得している。 このハンドアウトを公開した直後、予知夢シーン『たった一人の味方』が発生する。 □町の伝承 情報鍵:《物語》 この地方に伝わる昔話。 昔、不思議な力を持つ青年がこの地にいたが、その力を恐れた神によって獣の姿に変えられてしまった。 獣に変えられた青年は、何も知らない町人たちによって神への貢ぎ物にされた。 神は青年の力を取り込み、この地に君臨したという。 ■【秘密】 この伝承には、細部の異なる似たような話がいくつかあるが、話の核となるのは次の2点である。 1.不思議な力を持つ青年が神によって獣にされた。 2.“巫女”に率いられた町人たちの手によって青年が神へ捧げられた。 今、何者かがこの伝承になぞらえて災いを起こしている。 それを食い止めるためには、伝承の2つの項目の再現を阻止する必要があるだろう。 ◆「遺跡のある丘」のハンドアウトを公開 □遺跡のある丘 エンバスの町のはずれに広がる丘。丘の上には古代の遺跡がある。 歴史的には貴重な物だが、予算が付かず調査されず放置されている。 ■【秘密】 この土地は断章〈深淵〉に憑依された封土である。 丘にある遺跡は元々とある神を祭る古代の祭壇だった。 「歌うヤドリギ」は〈禁書〉を使い、この土地に伝わる伝承をなぞることで、神「深淵の支配者」の復活を目論んでいる。 エネミーデータ「漆黒の支配者」を公開する。 ◆NCP◆ ○書籍卿「歌うヤドリギ」 名前:メルフィン・アプ・キーファー 旧世界秩序に所属する書籍卿。傲慢で嗜虐的な性格。赤毛と緑の目をした白人の青年の姿をしている。 闇の心臓を嫌っており、彼らが不利になる情報は積極的に〈大法典〉に流すが、基本的には〈大法典〉と敵対している。 ◆エネミーデータ◆ ●断章〈降り注ぐ〉 初期憑依深度:0 攻撃:3 防御:4 根源力:4 魔力:8 魔法:【彗星】、【妖革】 領域:星 特技:《天空》 ●断章〈深淵〉 初期憑依深度:1 攻撃:4 防御:3 根源力:4 魔力:8 魔法:【動揺】、【凶兆】 領域:闇 特技:《深淵》 ●断章〈夢〉 初期憑依深度:2 攻撃:3 防御:3 根源力:4 魔力:9 魔法:【乙女召喚《眠り》】、【魔睡】 領域:夢 特技:《眠り》 ●「歌うヤドリギ」メルフィン・アプ・キーファー ランク:5 攻撃:4 防御:4 根源力:4 魔力:8 領域:歌 特技:《黄金》、《想い》、《旋律》、《時》 魂の特技:《ティル・ナ・ノーグへ至る道》 魔法:【緊急召喚】、【分身召喚】、【交易】、【報復】、【籠絡《旋律》】、【角笛】、【呪砲】 解説:「歌うヤドリギ」は真の姿を持たない。 ●越境者「漆黒の支配者」 ランク:6 攻撃:6 防御:6 根源力:7 魔力:20 領域:闇 特技:《天空》、《血》、《眠り》、《深淵》、《絶望》 魂の特技:《漆黒の夜》 魔法:【緊急召喚】、【分身召喚】、【祖霊】 【滴る夜】呪文 深淵 範囲:全員。指定特技の判定に成功すると自分以外のキャラクター全員に2点のダメージを与える。抵抗判定は個別に行うこと。 【闇の支配者】緊急召喚を行うときの特技が必ず闇分野になる。 解説:「漆黒の支配者」は性別を持たない。分身召喚の場合には1D6を振りその出目が1~3の場合には騎士、4~6の場合は乙女が召喚される。また、分身召喚には魔素を必要とする。 ◆エンバスシーン表◆ 2:町の中。満天の星空が広がっている。建物の明かりが少ないせいか、星が明るく見える。そのシーンに星の魔素が1点発生する。 3:遺跡のある丘。何か獣の咆哮が聞こえた気がした。気のせいだろうか…。そのシーンに獣の魔素が1点発生する。 4:町の中。風が強く吹き、雲が勢いよく流れていく。オリーブ畑は大丈夫だろうか。そのシーンに力の魔素が1点発生する。 5:遺跡のある丘。丘の中腹にはユーゴの家がぽつりと建っている。 6:町の中。通り沿いの静かなカフェでは老夫婦がカフェオレを飲んでいる。 7:周囲で《断章》が引き起こした魔法災厄が発生する。ランダムに特技を選び判定を行うこと。成功すると、好きな魔素が1点発生する。失敗すると「運命変転」が発生する。 8:遺跡のある丘。丘からはエンバスの町が一望できる。 9:町の入り口。「Bienvenue a Embass」と書かれた看板が揺れている。 10:町の中。夕暮れ時、奥まったところにあるパブからにぎやかな音楽が聞こえてくる。そのシーンに歌の魔素が1点発生する。 11:夢の中。どこからか子供の泣き声が聞こえてくる。あの声は…。そのシーンに夢の魔素が1点発生する。 12:遺跡のある丘。遺跡の中は薄暗い上に足場が悪い。あまり長居はしたくない。このシーンに闇の魔素が1点発生する。